台風18号禍。京都、嵐山を流れる桂川の上流、「日吉ダム」よ、ありがとう! 見えないところで頑張る人たちに目を向けてみる。
- 2013/09/19
- 15:59
神戸もあの日の夜は風も雨も凄くて、夜中に
一度目が覚めたくらいでした。
日中は何度かツイッターから「桂川」を検索し、
リアルタイムの情報を見ていました。
その中で、とても驚いたのは「桂川上流の日吉ダムの
貯水率が300%を超えた」という情報でした。
「バケツに水が100%溜まっている」というのは、
バケツいっぱいに水が入った状態ですが、
ダムの場合は違うんですよね。
と、なんだか知ったかぶりぶりで偉そうにいってますが、
私はこの表示の仕方を知りませんでした。
だから、まず、
「300%超えって一体どういう状態なんや!?」
と思ったわけです。
で、ちょっと調べてみました。
★日吉ダムは、先ずは治水のため、そして関西圏の
人口急増による利水目的も含めたダムです。
【日吉ダム - Wikipedia】
https://www.tobishima.co.jp/works/civil/dam/civil_019dam.html

日吉ダム(飛島建設HPより)
ですので、日吉ダムの「容量」は、次の3つに分けられます。
◆堆砂容量 → 砂が積もって使えない容量
◆利水容量 → 水道水、かんがい、農業用水、工業用水に使う容量
◆治水容量 → 洪水に備えるための容量で、普段は空けておく
●下記のHPで「日吉ダムの断面図」と「説明」を
見てもらうと分かりやすいと思います。↓
【日吉ダム貯水池の使い方 ■ 水の量をコントロール 】
【常時満水位】
上に書いた「利水容量」の最高水位。
貯水池の水位は、渇水と洪水の時期以外は
常時この水位に保たれます。
【サーチャージ水位】
洪水時、一時的に貯水池に貯めることが出来る最高の水位。
【洪水調節容量】
常時満水位からサーチャージ水位までの容量。
図はこちらが判り易いかも。↓
http://www.tokachi.pref.hokkaido.lg.jp/kk/okk/sa-dam-chishiki.htm

ダムの「容量」について(佐幌ダムHPより)
あの日、ツイッターで流してくれていた情報というのは
本当にまともでして。
下記の「リアルタイムデータ」のリンク先が貼ってあって、
私も見させてもらいました。
いやぁ、判り易いです。↓
【リアルタイムデータ 独立行政法人 水資源機構 関西支社】
ここって、「独立行政法人」なんですよね。
4年前、民主党がマスコミと一緒になって、
「仕分け、仕分け!!」と散々槍玉に挙げられ、
何もかも一緒くたに「独立行政法人は悪!不要!」って
状態になりましたよね・・
さて、このデータの中で、「有効」と書かれているのは、
いわゆるコレ。↓
【有効貯水容量】
ダムの総貯水容量から堆砂容量を除いた容量。
本当の「ダム満タン」状態のことですね。
上記リアルタイムデータにも「貯水率」というのがでていますが、
その「貯水率」の計算方法は、
「貯水率(%)」=「貯水量」÷「利水容量(常時満水位時)」×100(%)
となるわけです。
※この「貯水量」は、そのまま、「貯まっている水量」でOK。
バケツの場合は縁スレスレまでが「100%」ですけど、
ダムの場合は、利水用の水が「常時満水位」まである
状態が「100%」の基準となってるわけです。
日吉ダムは常時満水位の利水容量が1600万㎥で、
有効貯水容量は5800万㎥なので、
そこまで水が貯まったら、
5800万÷1600万×100=362.5%となりますが、
今回は、確か370%を超えていたので、
(調べてみると9月16日(月)午後3時に最大377.7%を記録。)
360%をモロに超えて、本当に「溢れんばかり」になっていたと
いうことですよね。
下記のHPも見てみますと、↓
【水資源機構 日吉ダム管理所】
★今回の台風18号では、日吉ダム管理開始以来、
最大のダム流入量を記録 したそうです。
(2004年、下記の方で触れる台風23号禍の時の約2倍!)
★『9月19日 午前0時現在 日吉ダムの貯水率は「100.0%」です。』
という情報も書かれています。
これは、緊急時を脱した後、貯水率が100%に達していれば、
貯水量がそれを超えていても「100%」と表示されるようですね。
実際、当然のことながら貯水量が基準よりもはるかに多く、
次の雨に備えて夏季制限水位の178.5メートルまで下げるため、
21日(土)まで放流作業が継続されるようです。
本当にすさまじい雨量だったということがよく分かります。
★twitterによると、報道ステーションでは、
●「桂川の上流にある日吉ダムの映像」
→ 「貯水率が360%となり、正午から断続的に放流した」
→ 「直後に氾濫している下流のシーン」
と、誤ったイメージを植え付けるような歪んだ報道を
流していたようです。
でも、「朝ズバ」では、一応、専門家の人が「よく頑張った」的な
ことをいってたようです。
みのもんたがもしいたら、また、与良の日だったら、多分、
口出しして叩くでしょうね。
「もうちょっと、なんとかならなかったのかなぁ~~~~~、ねぇ。」
とか。
最近は、災害直後の被災者にマイクを向けて、誘導尋問をし、
わざわざそういう「答え」を引き出し、「国民の声」として
報道しますからね。
もう「やりたい放題」ですよ、本当に。
★twitterでも、結構ダム批判をしている人がいたらしく、
そのまとめができていました。↓
【日吉ダムの異常洪水時防災操作】
一方、ダムの頑張りを讃えるまとめも!↓
【日吉ダム、京都を救う! 危険な状態を耐え切る! - NAVER まとめ】
★まず、ここで伝えておかなくてはいけない1つには、
日吉ダム管理所のHPにも載っているように、
■6月16日より10月15日まで、ダム貯水池の満水位を
洪水貯留準備水位(標高178.5m)まで13mほど下げることにより、
洪水に備えた運用をしています。
となっていることです。
大雨などで一気に大量の水が下流に流れることを防ぐため、
特に雨の多い梅雨から台風の時期(洪水期)は、
前もって水位を下げて(洪水期制限水位)
ダム湖にたくさんの水を貯められるようにしておき、
ダムの下流域の水害を少なくします。
ちゃんとこういった対策は普段から取られているのですよね。
で、当日、満タンにならないように、もっと放流を早めにやって
貯水量を減らしておくべきだった、とか言ってる人がいるんですよね。
これに関して、他にも早明浦(さめうら)ダムなども
例にあげて批判している人達もいるようなんですが、
早明浦ダムといえば「うどん県」いや「香川県」の命綱ですよね。
大きく言えば「四国の水がめ」です。
香川の取水制限のニュースでここがよく出てくるので、
香川県にあるように思ってる人がやっぱり多いみたいですね。
でもあのダムは実際には高知県側にあって、関係各県、
色々協議しながら、利水容量を分配してるんですよね。
で、「台風が来ることわかってるから、直前までにどんと減らすべき」
なんていう意見が見られましたが、
これって単純すぎて怖いです。
早明浦ダムは、よく雨が降らなくて干上がってしまうことが
最近多くて「ダムの底が見える」ニュース映像で有名ですけど
その干上がったダムが、たった一日の降雨量で、
「貯水率100%に回復!」なんてこと今まで何度も聞きましたよ。
http://matome.naver.jp/odai/2137830162437694001

よくニュース映像で流れる「干上がった早明浦ダム」
そもそも「豪雨になる」と天気予報で言われても、
その通りになるかどうかはお天道さま次第ですし。
また、「ピンポイント」で降ってくれないと、周辺地域に
降ってもダメなんですよね。
だから、利水容量を放流でぐっと減らしたりするのは
本当に危険だと私は思いますね。素人ながら。
これやって、万が一、雨量が大したことなくて、その後、
雨が降らなかったとしたら、香川県はあっという間に
「取水制限」に苦しんでしまいます。
で、マスコミは、「うどん屋さんが困っている」と報道し、
今度は、「放流したからだ!」とまた批判する・・。
どっちに転んでもマスコミは行政を批判するんですよね。
★で、もうひとつの伝えておかなくてはならない2つ目は、
「洪水を防ぐためのダム操作の難しさ」。
ツイッターまとめの中で
「ダムに詳しい一般人(ダムマニアの神様)の方が
2009年10月台風18号の時のダム洪水調整を説明しています」
というのがあったので、早速拝見させていただきました。↓
【ハイドログラフで泣いてくれ その1】
いやぁ、面白いです!凄いです!
ぜひ読んでみてください、皆々サマ!
この、「ハイドログラフ」とは、管理人さんによると、
観測点での時間経過と水位の変化を
いっぺんに見られるグラフです。
洪水調節を行うダムのハイドログラフには
・時間経過
・ダムへの流入量
・ダム貯水位
・放流量
等が記されています。
で、管理人さんが仰ってるように、
「ダムの活躍が顕著に表れるグラフ」でもある!
ということであります。
特に、身近に感じられる話として、「その2」をおすすめします!↓
【ハイドログラフで泣いてくれ その2】
2004年台風23号。
皆さんも多分覚えていると思います。
今回と同じ福知山で起こった台風被害です。
由良川が氾濫し、水没した観光バスの屋根で
協力し合いながらお互いの命を守った方たちが
いらっしゃいました。
あの時の事です。
当時のこと、マスコミはどのように伝えていたでしょうか。↓
【京都新聞|台風23号】
これでも分かるように、マスコミからは「大量放水が下流の増水を招いた」
とダム側は相当批判されていたようですね・・。
この台風23号の由良川の氾濫の時に関係したのが
「大野ダム」。
以下、「ハイドログラフで泣いてくれ その2」より。(写真説明文等は略しています)
私がハイドログラフに興味を持ったのは
2004年の台風23号禍でこれまた本則操作を離れて
但し書き操作覚悟の感動的な洪水調節を行った
京都府の大野ダムの活躍を知ってからでした。
建設省が造り、京都府が管理する大野ダム。
2004年台風23号で(大野ダムは)限界ぎりぎりまで
貯め込みました。
下流で由良川が氾濫し観光バスが道路上であるにも関わらず
氾濫した川の濁流に取り残され乗客がバスの天井に上がって
水が退くのを待ち、耐えました。
この時、大野ダムはダム操作の内規に従えば
放流量を増やすべき状況に在ったのです。
でもバスが取り残されている事を知らされた管理所は
内規とは異なる操作を行いました。
ダムだけで治水は出来ない。
そして堤防だけでも治水は出来ない。
森林の保水力も大切ですがそれだけで洪水は
防除できません。
これらを組み合わせて総合的な河川改修と管理が
大切だという事。
本来ならこの流入量に対して放流量を増やすのが
大野ダムの内規で定められた操作、『本則操作』です。
しかし、下流で被災している人が居る事を知った
ダム管理所が実際に行ったのは放流量の絞り込み。
(ハイドログラフで)放流量を示す線が非常になだらかなのが
解っていただけますでしょうか。
規則は守らねばならない事は解っている
しかしこのダムは“F”を冠された誇り高きダム
今ここでその力を発揮しないでその役割を全うしたとは言えない
これより 本則操作を離れる!!
人命を優先し最大限の力を出せ!!
これが泣かずに居られようか…(涙)。
結果、大野ダムは京都府より表彰を受ける事となりました。
拍手拍手♪ぱちぱちぱちぱち♪
この洪水調節操作はこの年のダム・堰危機管理業務顕彰表彰で
優秀賞を受賞しています。
「大野ダム 洪水調節時における下流域の状況を
考慮した操作による下流被害の軽減」
右にちらっと写っているトロフィーがそれです。
★ちなみに「F」というのは、「洪水調節」の目的を
こう表すそうです。
「洪水調節」というのは、本当に難しいものなんだと
この内容から伝わってきます。
この大野ダムにあるビジターセンターでは
大野ダムの紹介をはじめダムに関する文献がたくさん
置いてあって、そして大野ダムが大活躍した時の
新聞記事なども展示されているそうです。
また、この大野ダムのダムサイトにある石碑には
「治水祈念」という言葉が
書かれているそうです。↓

この記事に写真で載っている「表彰状」ですが、
こんな内容でした。↓
http://yosuzumex.daa.jp/dam/damnight2009pn/damnight2009pn_02.html
【表彰状】
大野ダム管理事務所職員一同
あなた方は平成16年 台風第23号において、
由良川下流域の氾濫状況等を踏まえた洪水調節操作を行い、
洪水被害の軽減に尽力されました。
その功績は誠に大であり 他の模範と認められるので、
これを表彰します。
平成17年6月17日
京都府知事 山田啓二
いいですよね~、こういうの。
職員皆さんが一緒に頂いたのも良かったですね。
ホント。
世間では、被害が大きかったゆえに、また、総じて、
マスコミによって行政は絶えず叩かれるだけ叩かれる、
というのが続きます。
でも確かに、あの時、
こうして頑張っていた人たちがいたんですよね。
マスコミは、何でもかんでも「批判」のオンパレードです。
でも、私は、こういう蔭で頑張っている人たちに目を向けたいと
常々思います。
福島原発もそうでした・・・。
橋下や古賀は、関西電力を「停電テロリスト」などと言い放ちました。
私は、ものすごく腹が立ちました、本当に。
こいつらは、現場の人の気持ちも頑張りも全く見ない。
マスコミもそう。
その煽動が最も酷かったのが4年前でした。
「コンクリートから人へ」
ダムも何もかも、全否定しました。
国民も、「右にならえ」でした。
日本統治時代の台湾。
農作物が育てることも難しかった不毛の土地、嘉南地域。
八田與一と、そして日本人と台湾の人たちが
一緒になって作った烏山頭ダム。
このダムの完成によって、この地域は
台湾でも屈指の大農産地帯となった。↓
【日本の大切な隣人、台湾の心 ⑦】 日本でも教科書に絶対載せて欲しい。烏山頭ダムの「八田與一」
これは、台湾だけではないはず。
同じく日本の統治時代があった朝鮮半島にも同じような
ダムが幾つもあるはずです。
なぜ、朝鮮では台湾での烏山頭ダムのように、
「喜びの声」「称える声」がないのか。
ま、ここで敢えて触れるまでもありませんけどね。
利水のため。
そして治水のため。
日本の土木技術の素晴らしさ。
ダム技術の素晴らしさ。
そしてダムで働いている人たちも頑張っている。
日本はすごい国ですよ。
何度も何度も洪水や、地震などの大きな災害に
見舞われても、その度に、その時を振り返り、
検証し、前を向いて、生命と財産を守るために
動くんですから。
全てが上手くはいかないです。
でも、そのたびごとに、多くの人が対策を新たに
施そうと頑張っています。
だから日本は今もずっと「先進国」であり続けるのだと
思います。
多くの人たちのお陰です。
頑張っている皆さん、本当に有難うございます。
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